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介護の現場はしんどいのは当たり前じゃないか!
という声が聞こえてきそうですが、本当にそうなのでしょうか。
たしかに、3K(きつい、汚い、危険)と言われてきましたし、これに2つ追加された(暗い、臭い)5Kなんて言われ方もします。

でも事業所を回ってみると、たしかにしんどい事業所もありますが、そうでもない事業所も多く存在するのも事実です。
この違いは、一体全体どこから来るのか?
謎ですね。

介護事業所の人員配置は、その事業(サービス)内容によって法律で定められていますよね。飲食店に置き換えていえば、客席10に対してホールスタッフは1、客席15に対して調理場スタッフは1、50席の飲食店だとすると、ホールスタッフは5人、調理場スタッフは3.3人配置をする、という具合ですね。

でも、飲食店は法律で人員配置は法で定められていませんので、ブラックなシフトで回しているところが実情でしょう。介護業界に負けないくらい人材確保の格差が広がっている業界です。

介護業界は法で定められていますから、飲食店よりもましなはずです。
生活や命を守る業界ですから、最低限とはいえ、事故が多発する基準を採用しているわけはないでしょうし、実際に採用していません。

理由はいくつもあると思っているのですが、しんどい事業所とそうでない事業所を決定づける要素とはいったい何なのでしょうか。

「そりゃー経営者が暴利をむさぼってるからに決まってるでしょ!」
「管理者があんぽんたんで役にたたないからよ!」
「ぜんぜん仕事しないやつのせいで、できる人がどんどん忙しくなるのよ!」
なんて声が聞こえてきそうです。

これらの理由も、差を生み出している要素と言えるでしょう。
でも、差を生み出す決定的な要素を見つけたんです。
それは・・・

「ありがとう!」と利用者に言われることが生きがいです、という職員が多いところは・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

しんどい事業所が多かった!

という事実です。

「ありがとう!」と言われることを生きがいにして業務に従事する。
すばらしいことじゃないですか。
生きがいに満ちて仕事できるんだから幸せです。
なのに、なぜしんどい事業所になってしまうのか。

これは、「やりすぎてしまう」、「やりすぎることが同調圧力になる」ということが原因です。
ホスピタリティが(ある意味)強い管理者等が、情熱をほとばしらせると、こういう事業所に陥りがちになります。
結果、職員は精一杯奉仕して、どんどん疲弊していくのに、要求はどんどんエスカレートしていって、満足度は上がらない、という悪循環を生じさせます。
「あ、うちだ。」と心当たりがあるかたは要注意。

じゃあ、どうすればいいのか?
利用者に「ありがとう!」と言う場面をいかにつくれるか?に生きがいを持つ、というパラダイムシフトができるかどうか、にかかっています。

「ありがとう!」を言ってもらって生きがいになる、というのは、結果、自己満足で、自分が満足するために利用者を存在させていることで、自分を中心とした世界観に生きています。主役は、職員(あなた)です。

一方、利用者に「ありがとう!」という場面をつくることが生きがいになる、というのは、「利用者が主役」の世界に職員(あなた)が存在しなければ実現できない世界観です。他者(利用者)のために、あなたが存在するわけです。

しんどくない事業所は、まさに後者の世界観で職員が仕事をしていました。
ベクトルがまさに180度逆なのです。

しんどい事業所は、利用者を利用者様、ご利用者様と呼んでいた。
お客様扱いが色濃く出ているのが特徴でもあります。

どこかの会社が、
「世界一、ありがとうを集める会社!」
というのをスローガンに掲げていましたね。
傲慢です。ブラック一直線です。

参考になるのは、居酒屋(あ。言っちゃった)じゃなくて、サービスレベルの高いバーのバーテンダーやホールスタッフの姿勢や動きです。

彼らは、「気配」を感じることをとても大事にしています。
そして、主役は「お客さん」であることをわきまえています。
お店に入ってきたその瞬間に、その日の気分を観察から察知します。
過剰なサービスはご法度です。
そりゃーデートで二人の時間を大切にしているときに、しょっちゅう「お代わりいかがですか?」とか声をかけられたらウザいです。

ちょっとそわそわしているな?という気配を察知すると、トイレ(バーでは化粧室といいます)があいているかの確認に小走りで向かいます。化粧室まで行って、なんだ使用してるじゃないか!と無駄足を踏ませないためです。
席を立って、数歩歩いた時に、目立たないようにお伝えします。

「カラン」という氷の音も喧騒の中で30メートル離れていても、キャッチします。何か注文しようとカウンターの方を見ようとしたときには、忍者のようにホールスタッフがちょうどよいタイミングで現れます。

彼らは、お客さんの人生の中で、このバーで過ごす時間を、お客さんが主役で、快適に、気持ちの良い時間を過ごしてもらうことに徹します。
お客さんがどのような時間を過ごそうとしているのか?過ごしたいと思っているのか?を察知し、その世界の中にひっそりと潜り込んでサービスすることに徹します。自分たちのサービスを決して押し付けません。

介護は生活全体を扱うので、バーほどお客さん扱いをしない決定的な違いはありますが、彼らから学べることはとても多くあります。

バーのプロ意識を心の奥底に持ちながら、下町の食堂のようにふるまう。
これが結構、適した形かな~と感じている今日このごろです。

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佐藤順一郎 オカゲサマ@伴走者

あなたがいるから、(おかげさまで)私がいる。 「横並びのかかわり」を研究しながら、いろいろなプロジェクトに首を突っ込んだり、突っ込まなかったりしています。

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